24
重苦しい夕食の時間が始まった。 突然と消えうせた5人・・・・・・先にいなくなったJ殿を合わせると、合計6人もの人間(一部エルバーンやタルタルを含む)が消えたことになる。 「一体、何が起こっているんでしょう?」 どざ殿がため息混じりに呟いた。どざ殿だけではない、その場にいる9人すべてが深い困惑の中にいた。 「今度はみんな、チェーンがかけられていた。と、いうことはうどんの無実が証明されたってことだ。あの隙間ではいかにタルタルといえど通り抜けられないからな・・・・・・うどんもいなくなったけど」 隊長は両手を広げている。まさにお手上げ状態だ。 「せっかく、全員集合の温泉旅行だったのに・・・・・・」 レイ様の声も物悲しい。 「とりあえず、これからどうするんだ?」 と、アスラン殿。メンバー達はしばらくお互いに視線を送りあっていたが、 「ようするに、これから取るべき行動は二つに一つじゃないのか?このまま帰るか、消えたみんなを探すか」 ぎだ殿が一同を見回しながら言った。 「みんなを探すって言っても・・・・・・死んでHPに戻っていたら探しようがないんじゃ・・・・・・?」 今度はどざ殿。俺は確かにその通りだと思ったが、 「いや、これはしんさんが言っていたように神隠しなんじゃないのか?もしも、みんなが殺されたのなら、すぐにHPに戻るだろうか?俺だったら戻らない。誰かが見つけてレイズを唱えてくれるかもしれないからな。死んでからHPへ強制送還されるまでの時間は(ヴァナ時間で)丸一日もあるし」 ぎだ殿の長々とした説明。俺は再びその通りだと思った。恥ずかしい話だが、俺にはこういった考える仕事は向いていない気がした。 「神隠し、か・・・・・・だとしたらみんなはどこへ行ったんだろう?」 と、隊長が言った。誰もこの問いかけに答える者はいない。隊長も返答がないことを悟ったのか、 「でも、まだ帰らない方がいいんじゃないかな・・・・・・その、ほのかやヴァスコが来るかもしれないし・・・・・・」 「しかし、このままここに居るのも危険なんじゃない?まあ、神隠しはあくまで噂なんだけど・・・・・・」 と、しんさん。平行線になりかけた話をまとめたのは隊長だった。 「じゃあ、とりあえず明日まで待とう。今夜はこの場所で全員で過ごすってのはどうだ?それだったら神隠しも起こりにくいとは思うし」 「それでいいんじゃないのか?」 アスラン殿が賛成する。 そうして一同はここでの最後の夜を迎える準備を始めた。
25
「結局どういうことなの、ウィン?」 レイ様がウィン姉さんに尋ねる。ウィン姉さんはさきほどの話し合いの時も、一人で何もしゃべらず、考え事をしているようだった。 「それが分かればとっくに話してるって」 ウィン姉さんはそっけない。 食堂に残っているのはいつものメンバーというか、ウィン姉さんとレイ様、それに俺だった。他のメンバーは呑気なのか余裕なのか、温泉に入っている。 なぜ俺は温泉に行っていないかというと・・・・・・厨房で皿洗いを命じられていた。当然何も悪いことなどしていないのに、である。 「そんなこと言って、結構分かってるんじゃないの?少しぐらい教えてよ。この事件は殺人なの?それともやっぱり神隠し?」 「ふむ・・・・・・私は神隠しじゃないと思ってる」 「どうして?」 「神が部屋を密室にする理由がないから」 「・・・・・・なるほど」 レイ様は納得の表情だ。 「となると殺人なの?」 「うーん・・・・・・殺人だとしても密室の謎が解けないことには・・・・・・」 姉さんはしきりに首をひねっている。 「ねえ、ウィン。この事件、私達で解決しない?」 「はなから私は解決するつもりだったけど・・・・・・急にどうしたの?」 「だって・・・・・・なんか後味悪いじゃない。このまま帰るの。そりゃ、ジュノに帰ったらみんながいて、真相がはっきりするのかもしれない。でも・・・・・・なんか中途半端ですっきりしないでしょ?」 「ふむ・・・・・・だったら今のうちにちょっと調べてこようか?」 「何を調べるの?」 「Jの部屋。手がかりは現場にありし、って言うし」 「分かったわ。行きましょう!」 勢いよく立ち上がる二人。 「あのー・・・・・・」 恐る恐る声をかける俺。 「何?」 なぜか邪険なウィン姉さん。 「俺も行ってもよろしいですか?」 「いいけど・・・・・・邪魔しないでくれれば」 「はい!!」 俺は元気よく厨房を飛び出した。この忠誠心は姉さんがミスラだから生まれるのだろうか?
26
「まず、これが殺人事件だと仮定しよう」 212号室。J殿の部屋。中は当時のまま、荒れ果てていた。 「犯人は部屋を密室にした・・・・・・ここで、Jの部屋だけなぜかチェーンがかけてなくて、ベッドが置いてあったという謎も出てくるが、今は置いておこう」 淡々と整理し始めるウィン姉さん。何度も頭の中で考えをめぐらせていたのであろう、言葉もすごくスムーズだ。 「今一番考えなければならないのは、どうやって犯人がこの部屋から出たのかということ。タルタルはJの部屋の隙間は通れたけど、チェーンがかかった部屋の隙間は通れない。同一人物の犯行だとすると、ドアからは出れないことになる」 俺は静かに頷いた。なるべく邪魔をしないように部屋の隅っこに立っている。 「じゃあ、窓は?」 レイ様は部屋の窓を指差した。なるほど、部屋の窓は結構大きく、小柄な人間なら通れそうではある。しかも、ここは二階だ。飛び降りてもなんとかなるのではないか? 「窓も駄目でしょ。だって、外はこの砂嵐だよ。開けたら部屋中砂だらけになってしまう」 あっさりと窓説は否定された。 「壁に秘密の出入り口とか、ないの?」 「探してみる?」 こうして、部屋の捜索が始まった。壁や床を丹念に調べる・・・・・・だが何も怪しいところは見つからない。 「ふむ・・・・・・やっぱりないか・・・・・・」 ウィン姉さんもあまり期待していなかったらしく、そんなに悔しそうではない。 「・・・・・・もうお手上げじゃないの!」 レイ様はうんざりしたような叫び声を上げた。 結局、密室の謎は解けぬまま、三人は無言で食堂へと戻った。
27
二時間が過ぎた。 風呂上りの面々が、ぞくぞくと食堂へ集まってくる。 レイ様も、今は温泉に入っていることだろう。相変わらずウィン姉さんは食堂のカウンター席で、眉間にしわをよせていた。 しばらく静かな時間が過ぎたころ、食堂にレイ様が戻ってきた。見てすぐに湯上りだと分かる。これ以上ないほど、髪は艶やかになっていた。 だが、なぜか機嫌は悪そうである。 「どしたの、レイ?」 そんなレイ様に気づいたウィン姉さんが声をかけた。 「それがね・・・・・・どうも誰かに見られていたような気がしたのよ」 「温泉で?またあのブロックを外して覗いていた奴でもいたんでは?Lみたいに・・・・・・」 俺はウィン姉さんの流し目に気づかない振りをした。 「私もそう思った。実際にブロックは外れていたし。でも、少し怒ってやろうと思って向こうを見てみたら、誰もいなかったのよ」 それもそのはずである。食堂には隊長、アスラン殿、ぎだ殿、しんさん、そしてどざ殿・・・・・・すべての男が揃っている。誰も覗きは出来ないはずだ。 「その後もずっと視線はなくならなかったわ・・・・・・何か気味が悪くて」 「ふむ・・・・・・」 ウィン姉さんは腕組をして考え出した。 「まあ、気のせいだとは思うんだけどね。酒でも飲んで忘れることにするわ・・・・・・ウィンも飲む?」 「うん・・・・・・」 レイ様は厨房からグラスを取り出した。 「あるす君、悪いけどそこの足元の棚からお酒を取ってくれない?幻の名酒、『百花繚乱』があるはずなの」 レイ様は遠くのあるす殿に向かって声をかけた。 「まってください・・・・・・」 あるす殿は棚の戸を開けたが、 「ありませんよ」 「うそ?」 すたすたと棚に近づくレイ様。そして棚の中を覗き込む。 「本当だ。ない。おかしいなぁ・・・・・・さっきはあったのに」 「誰かが飲んだのでは?」 やりとりを聞いていたどざ殿が言った。 「残念・・・・・・」 レイ様はとぼとぼとウィン姉さんの隣に戻ってきた。 「らんくん、このグラス、片付けておいて」 「はい・・・・・・」 俺はカウンターに置いてあったグラスを取ろうとした。が、その時、ウィン姉さんが急に立ち上がったのである。俺はびくっとして驚いた。 「どうしたんですか、姉さん?」 ウィン姉さんは俺の問いに答えようともせず、いきなり食堂を飛び出した。 「ウィン!?」 レイ様が慌てて後を追う。俺もレイ様に続いた。 ウィン姉さんが飛び込んだのは212号室。J殿の部屋。 「一体どうしたのよ?」 困惑顔のレイ様をよそに、必死で床を調べているウィン姉さん。 「私の考えが正しければ、あれが残っているかもしれない・・・・・・」 「あれって何?」 その問いにも返事は無い。 「何だ何だ?」 いつの間にか他のメンバーもJ殿の部屋に集まってきていた。全員がウィン姉さんに注目している。 そして、ウィン姉さんの動きが急に止まった。 「・・・・・・これだ!」 確信を持った目でウィン姉さんが振り返る。 「ありがとう、レイ。おかげでこの事件、解決できそう!」
(遅くなってすいませんTT 実は推理編はこれで終りですTT 早くてすいませんTT しかも次回は最終回ですTT 短いのか長いのか分からないけどすいませんTT −次回予告ー すべての謎は解けたのか? そしてトイボのメンバーは全員そろうのだろうか? ウィレイ湯煙事件簿第十話にして最終話 期待しないくらいが丁度いいですよーTT あと、たぶん次回まで間が開きますのでそのつもりでーTT) Rey > さぁっぱり分かんないなぁw 最終話に期待します・・・そして続編が出るのですね? Dotheemon > 俺も覗き魔に入りたい年頃です・・・あけおめー♪ Kaz > 続編は楽しみだぁ〜〜〜 James > 犯人はこの中にいる!!(金田一風に・・・
名前 |