Super Robot Wars
                     Final operation 

                   
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現在の曲は「疾風!熱風!サイバスター」 夜蒼の流星さんの作品です! 
雰囲気を盛り上げて下さい(^-^;



      第一話「フロンティア4の危機」

 
突然のコロニー連合の設立から数日が経ったある日、それは何の前触れもなく起こった。

ズガァァァァッ! 

突如起こった爆発。
それは、コロニー外を巡回中のコロニー守備隊のモビルスーツのものだった。

モニターに映し出された光景に、フロンティア4・コロニー守備隊は目を疑った。

守備隊長「な・・・なんだと・・・!? まさか、DCの部隊か!? 
       くっ、コロニー連合に参加しない我々を力で屈服させに来たのか!?
       モビルスーツ隊、全機出撃!何としても内部への進入は許すな!!」


次々と出撃する守備隊のモビルスーツ。
???「・・・。まずいわね。DCの奴らに私達が察知されたのかも・・・」

                      ・ 
                      ・
                      ・
場所は変わり、ここはフロンティア4内の1つの喫茶店。店内に客はまばらで、
グラスを磨いているマスターは暇を持て余しているようにも見える。

しかし悪い店ではないようだ。
店内にはシックな外観に似つかわしく、クラシックが流れ、
ともすれば慌ただしく過ぎ去ってしまう時間を、ここではゆったりと演出している。

そんな店内の二人掛けのテーブルについている一組の男女がいた。
休日を恋人と静かに過ごしている、そんな情景にも見えないこともない。

男「!? この感じは!? コロニーの外で戦闘が起こっているのか!?セシリー、何か感じなかったか?」

セシリーと呼ばれた少女が目を閉じる。神経を集中し、何かの気配を察知しようとしているのだろうか。

セシリー「・・・間違いないわ、戦闘が行われているみたいね。どうするの?シーブック」

シーブック・アノーとセシリー・フェアチャイルド。
先の第三次大戦では連邦軍第13独立部隊、ロンド=ベルに身を置き華々しい戦果を挙げていた。

現在は故郷のフロンティア・4でコロニー守備隊に所属している。
ただ、コロニー守備隊とは言っても軍属ではなく、「善意の協力者」であった。
戦闘が起こったからといって召集される義務はない。

シーブック「仕方ないな。とにかく守備隊の基地に行って現状を確かめよう。場合によってはF-91で出ることになるかもな」
セシリー 「そうね。行きましょう・・・」

会計を済ませ、慌ただしく店内をあとにする二人。
テーブルには波紋が残った飲みかけのコーヒーと店の自慢のムースケーキだけが寂しげに残っていた。

街中を駆け抜けるセシリーとシーブック。

シーブック「はあ、はあ・・・大丈夫かい? セシリー?」
セシリー 「はあ、はあ、へ、平気よ。急ぎましょう」
シーブック「今日の埋め合わせは、必ずするから・・・」
セシリー 「フフッ、ありがとう」

程なくして二人は無事基地にたどり着く。

シーブック「シーブック・アノーです! 現状を知らせて下さいっ!」
守備隊長 「おお!シーブック、それにセシリーか!よく来てくれた!」
セシリー 「いったい、なんの騒ぎなんです?」
守備隊長 「DCの部隊の襲撃を受けている。すでに大半の守備隊は破壊された・・・。出撃してくれるか?」
シーブック「DC!? なんでこんな所にDCが!?」 
守備隊長 「わからん・・・。ただ、数日前、いくつかのコロニーが結託して連邦に宣戦を布告したのは知ってるな?」 

守備隊長のその言葉だけで、セシリーは理解したようだ。
聡明そうな顔立ちに違わず、頭はきれるようである。

セシリー 「・・・なるほどね」
シーブック「え?どういうことだい?」

少し得意げな顔つきでセシリーは自分の仮説をシーブックに披露する。

セシリー 「私達のフロンティア4はDCの資金援助を拒否、コロニー連合への参加も拒否しているでしょ? 
       それが気にくわないDCは、今度は力でねじ伏せに来たのよ」
シーブック「なるほど・・・。そういうことか。 それなら、隊長、僕とセシリーも出ます!」
守備隊長 「おお、そうか。F-91とビギナ・ギナの調整は完璧だ。頼むぞ」
シーブック「でもその前に、敵の戦力を知っておきたいな・・・ 隊長、モニターに戦闘の様子を出してもらえますか?」
守備隊長 「うむ。そうしよう」

瞬時にして映し出されたモニターには、
熾烈な戦いを繰り広げる両軍の姿がある・・はずであった。
しかし・・・

シーブック「・・・なんだ? あるのは残骸ばかり・・・ まさか!?」
セシリー   「!? シーブック・・・あの残骸のエンブレムを見て・・・」
シーブック「コロニー守備隊のエンブレム・・・ ぜ、全滅!? そんな・・・」
守備隊長 「そんな・・・ばかな」

驚愕を隠せない3人。
そして、無礼な訪問者は突如現れた。

通信兵  「!? 強制的に回線に割り込んでくるものがいます!回線、開かれますッ!」
???         「ふふふふ・・・。久しぶりだな」
セシリー 「あ、あなたは・・・!!」
シーブック「鉄仮面・・・カロッゾか・・・!?」

 

カロッゾ「久しいな。娘よ」
セシリー「・・・。」
カロッゾ「ふん。まあいい。コロニーの責任者を出して貰おうか」
守備隊長「一体、何の用だ? コロニー連合への加盟なら断固拒否する!
       我々は無用な争いは好まない!!」
カロッゾ「ほう・・・貴様らにどれほどの戦力が残っているというのだ?
      コロニーの一つや二つ、ラフレシアの力を持ってすれば簡単に制圧できる。 むざむざ死を選ぶこともあるまい」

さも意外そうなそぶりを示すカロッゾ。挑発しているのか、本気でフロンティア4が屈服すると思っていたのか・・・。
おそらくは前者であろう。 

今でこそDCのハマーンの元従順に動いているもののいつまでも他人の下に
治まっている種の人間ではない。

シーブック「ずいぶんな自信だな、カロッゾ!確かにコロニー守備隊は壊滅的打撃を
       受けているが、お前の周りにDC機の反応もない!
       痛み分けという所じゃあないのか?」
カロッゾ「ふ・・・はははは・・・はーーはっはっはっは!!くっくっくっく・・・」        

さも可笑しそうにカロッゾが笑う。その様子がセシリーの気に障ったらしい。
先ほどから沈黙を守っていたセシリーが堪らず口を出す。

セシリー「何がおかしいの!? 気でも触れたのかしら?」
カロッゾ「くくくく・・・これを笑わずにいられるものか」

顔を見合わせるシーブック達3人。

カロッゾ「確かに今貴様らがレーダーで捕らえられる範囲には我が軍はいないな。 今は後方待機、と言ったところだ」   

キツネにつままれたような、とはこのようなことを言うのであろう。
その場に居合わせた誰しもが呆気にとられた表情を見せている。
そして次に見せる表情は自分の中に浮かんだその考えに恐れ、信じたくない、そんな表情。

カロッゾ「ふははは。今貴様らの考えていることが事実なのだ。
      貴様らの言う守備隊など、ラフレシア一機で充分だったと言うことだ
      貴重な戦力をむざむざ使用することないと判断してな。
      全機後退させたのだよ」 
守備隊長「ば・・・ばかな!如何に貴様の機体が強力だとて20機のジェガンを
       単機で撃破するなどと言うことが・・・」
シーブック「しかもラフレシアは無傷・・・か」
通信兵「あっ、セシリーさん、どこへ!?」

突然走り出すセシリー。いても立ってもいられなくなったのであろう。

セシリー「ビギナ・ギナで出ます!格納庫、開けておいて下さいッ!!」

目前のモニターが示す惨状。
不敵な態度で挑発する無礼な仮面の男。
惨状の元凶、無礼な男・・・。この男は少女の肉親なのだ。
セシリーは言いようのない不快感にとらわれていた。
(あの男を・・・この手で!!)普段のセシリーからは想像もつかない激情が彼女の身体を支配する。
そんな様子を見て取ったシーブックが声をかける。

シーブック「待つんだ!セシリー!」
セシリー「なによ!?シーブック!」

珍しく嫌悪感を露わにする。

シーブック「そんな状態でまともな戦闘が出来るわけない!ここは僕が出る!セシリーは待機していてくれ」
セシリー「な・・・! 私だって戦える!馬鹿にしないで!」

守備隊長「シーブック、F−91で出てくれ。
       セシリー、君は待機だ」  

数分間、シーブックとセシリーの言い合いが繰り広げられ、それを黙って聞いていた隊長が口を開いた。

セシリー「・・・。私は軍属ではありません!命令に従う義務はないハズです!
      ビギナ・ギナで出ます!!」

あくまで出撃しようとするセシリーをシーブックが必死に説得する。

シーブック「何か嫌な予感がするんだ。頼む・・・セシリー。
       ここはおとなしく待機していてくれ。カロッゾは必ず倒す。
       それに、あのカロッゾが何も考えずに僕たちを挑発しているとは思えない。
       きっと何か裏がある」

数分間のやりとりをしている間に冷静さを取り戻したセシリーは
ついにシーブックの言葉に頷く。

セシリー「シーブック・・・。分かったわ。おとなしく待ってる。
       必ず・・・必ず倒してね」
シーブック「もちろんさ。任せてくれ!」
守備隊長「無理はするなよ。救難信号はすでに出している。
             近くに連邦の部隊がいれば助けに来てくれるはずだ。相手はラフレシアだけじゃないんだ。
       後方にはMS部隊も待機している。救援が来てから一気に叩くんだ!」
シーブック「・・・わかりました」

守備隊長に一礼して司令室を出るシーブック。その表情は険しい。

シーブック「なんなんだ・・この嫌な感じは・・・。くそっ」

言いようのない不安を振り切るように頭を振るう。そして無理に自分に言い聞かせる。

シーブック「大丈夫だ・・・。なんて事はない。僕が鉄仮面を倒せばそれですむ話じゃないか」

そんなことを考えている内に格納庫に到着する。
そこでは一人の男がシーブックを迎えた。

整備長「おう、遅かったな、シーブック!待ちくたびれたぜ。
     あんな間抜けな仮面被った悪人、ちゃきちゃきっと落としちまってくれよ!」
シーブック「そうですね。負けるわけにはいきませんから。
       ところで、出撃した守備隊の人たちは無事だったんですか?」
整備長「ああ、7割方のヤツは脱出して戻ってきた。今頃メディカルセンターで治療を受けている頃だろうよ」
シーブック「7割・・・ですか」
整備長「ああ。7割、だ・・・」
シーブック「・・・シーブック=アノー、行きます」

ガンダムF91。シーブック=アノーの愛機であり、
超高威力ビーム兵器ヴェスバーを装備した強力な機体である。
その小さな機体は機動性も高く、
ニュータイプの能力を遺憾なく発揮できる機体と言えるであろう。

整備長「どうだい?シーブック!お前の愛機は完璧な仕上がりだぜ!
     俺の整備の腕にお前の操縦テクが加われば鬼に金棒、ガンダムにアムロ=レイってなもんだ!
     ガツンとやったれ!ガツンと!」
シーブック「ハハハ。アムロさんになんかぜんぜんかないませんよ」

軽く冗談を交え、コックピットに乗り込むとシーブックの表情は戦士の顔に変わる。
        
シーブック「シーブック=アノー、ガンダムF91、出ますッ!!」
シーブック(カロッゾ・・・決着をつけてやる!!)



ーそれとほぼ同時刻、日本の第二新東京市、特務機関NERV本部ー

???「どういうことだ、碇!」
ゲンドウ「どういうことだ、と申されますと?」
???「貴様のところのロボットを勝手にロンド=ベルに編入させるとは
     どういうことかと聞いておるのだ!!」
ゲンドウ「お言葉を返すようですが・・・エヴァンゲリオンはロボットではありません。人造人間ですよ。
      東方先生」

東方不敗マスターアジア。
ガンダムファイター、ドモン・カッシュの師であり先代のキングオブハート。
コロニー格闘技の覇者である。
そしてまた、デビルガンダムの完全体への進化を画策している人物でもある。

マスター「そんなことはどうでも良い!エヴァンゲリオンのロンド=ベルへの出向、
       どういうつもりかと聞いておるのだ!!」 
ゲンドウ「何をおっしゃってるんです?東方先生らしからぬ発言ですな」
マスター「貴様・・・この儂を愚弄するか!?」

サングラスの奥に隠された瞳は何を映すのか。
言葉遣いこそ丁寧ではあるが、ゲンドウはマスターアジアを前にしても動じる様子などは微塵も見せない。

ゲンドウ「使徒の狙いはエヴァです。ここにエヴァをおいておく限り、奴らはNERVを攻め続けるでしょう。
            使徒が後何体いるのか、どれほどの力を持っているのか、我々には情報が不足しています。
      エヴァ3機だけでここを守りきれるなどど考えるほど愚かではありませんよ
      ロンド=ベルとともにあれば使徒はロンド=ベルを狙い続けるわけです」
マスター「確かにここが潰されては人類補完計画に狂いは生じるだろう。
      だが、エヴァンゲリオンは厄介すぎるのだ!先の仙台での戦いで我々の存在を知られてしまった。
      ドモンがロンド=ベルにいる以上、儂達の行動にも奴らが干渉してくるのは
      目に見えておる。そうなれば当然貴様のエヴァとも戦うこともあるのだぞ!」

ゲンドウが不敵な笑みを浮かべ告げた一言に、流石のマスターも一瞬呆気にとられることになる。

ゲンドウ「・・・そうですな。では東方先生、あなたにエヴァの弱点をお教えいたしましょう」
マスター「なに!?」
ゲンドウ「何を驚いているのです?我々としても、先生にエヴァを破壊されるわけにはいきませんからね。
      ケーブルです。エヴァに装着されているアンビリカルケーブルと呼ばれるものを切断すれば、
            エヴァはそう長くは戦えません。
      まあ、ロンド=ベルには我々のスタッフも登場してますから
            当然ケーブルを簡単には狙わせないでしょうが、
            先代のキングオブハートにとってはたやすいことでしょう?」

あくまでも自分のペースで話をするゲンドウ。
その姿からは絶対的な自信がうかがえる。
少し落ちてきたサングラスを中指で元に戻す。

ゲンドウ「ご安心下さい。東方先生。人類補完計画に狂いはありません」
マスター「くっ、ええい、まあ良いわ!碇よ、その言葉に偽りはないであろうな!?」
ゲンドウ「その為のNERVです・・・」
ゲンドウ「なんなら全ての計画の進行具合をお見せいたしましょうか?」
マスター「ふん、事実の隠蔽は貴様の得意とするところであろうが!
      儂とて暇ではない。無駄に過ごす時間はないのでな。この場は引こう」

場を去るマスターアジア。その歩みは荒々しい。

マスター「碇ゲンドウ・・・喰えん男よ」

冬月「いいのか?碇。ゼーレめ、厄介なものを・・・」
ゲンドウ「問題ない。今更うるさい老人が一人増えたところで計画に支障はない。
      せいぜいロンド=ベルの気を引いてもらうとしよう」       


                
そして舞台は再び宇宙


オペレータ「艦長!救難信号をキャッチしました!」
???「救難信号だと?どこだ?」
オペレータ「現在座標割り出し中・・・判明しました!フロンティア4です!」
???「コロニーだと!?どういうことだ?」
オペレータ「どうやらDCの襲撃を受けているようですね」
                        
そのときブリーフィングルームに粗野な感じのする男が入ってきた。

???「おい、ジャマイカン。身体がなまる。俺とラムサス、ダンケルでサンクキングダムとやらに先行する。ハッチを開けさせろ!」
ジャマイカン「ヤザン大尉か、丁度良いところに来た。どう思う?」

ジャマイカンが救難信号の件をヤザンに話す。

ヤザン「フロンティア4っていやあ、コロニー連合には属していないはずだ。
     DCが力ずくで屈服させにかかったと見るのが自然だろうな」
ジャマイカン「そう考えるのが妥当なところ・・・か」      
ヤザン「おい、ジャマイカン、フロンティア4にいくぞ。 ここからならサンクキングダムより近い!ははは!腕がなるぜえ!」

ジャマイカン(フロンティア4・・・か。確か前大戦時にロンド=ベルに所属していた機体があるな)

ジャマイカン「おい、フロンティア4に通信開け!助けてやるとな!」
通信兵「はッ!しかし・・・いいのですか?」
ジャマイカン「なに、ただで助けるわけではない。条件を付けるがな・・・」
通信兵「?」

ジャマイカンが不敵な笑みを浮かべる

ジャマイカン「条件はこうだ。
        助けてやるかわりにフロンティア4のMSは我々ティターンズ艦隊に
        編成させる、とな。そう伝えろ」        

        
         第三話「異界の力」




シーブック「カロッゾ・・・決着をつけてやる!!」
カロッゾ「ふははは・・・ラフレシアに勝てると思っているのか!」

シーブック「いっけええ!!」

一条の光が駆ける。
F91のヴェスバーが放たれたのだ。
まともに当たればラフレシアの装甲とてただでは済まない。

カロッゾ「無駄だな・・!シーブック!」

しかしラフレシアはこれを回避する。

カロッゾ「ふはははは・・・じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ!」

ラフレシアのテンタクルロッドがF91を襲う。
次々と繰り出されるテンタクルロッドはしかし、F91を捕らえることができない

シーブック「くっ・・・。大丈夫だ。逃げまわれば、死にはしない・・・」
カロッゾ「どうした!逃げ回るだけなのか!?」
シーブック「でも・・・逃げ回ってるだけじゃダメだ!セシリーと約束したんだ・・!」

ビームサーベルを抜き放ち、テンタクルロッドを切り落とす。

しかし、シーブックの意識がテンタクルロッドに集中していると見たカロッゾはすかさずメガビームキャノンを放つ

カロッゾ「どこを見ている!」
シーブック「!? し、しまった!くっそお!死ねるかぁッ!!」

機体を反転させギリギリでかわすシーブック。
だがラフレシアの猛攻は休むことなく続く

残ったテンタクルロッドがF91をめがけうねりを上げて襲いかかる

カロッゾ「死ね!」
シーブック「だめだ、かわしきれないッ・・・!! それならッ!!」
シーブック「いっけええええええ!」

ヴェスバーが再び火を噴く。襲いくるテンタクルロッドごと焼き払い、その光はラフレシアに命中する      

シーブック「まだまだぁッ!!」

すかさずビームライフルを撃ち込むシーブック。
決着は着いたかに見えた・・・しかし・・・・

カロッゾ「なかなかやるではないか・・・」
シーブック「何!?無事なのか!?」

機体から延びていたテンタクルロッドは破壊されているものの、機体自体に決定的な打撃は与えられていなかった。

戦慄を覚えるシーブック

カロッゾ「ふはははは!怖かろう!」


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セシリー「何ですって!?」

コロニーではジャマイカンからの通信を今まさに受信していた。

ジャマイカン「助けてやる、と言っておるのだ。こちらの条件さえ呑んでもらえればな」
ヤザン「ははははは!俺様にかかりゃあDCの雑魚どもなんて蹴散らしてやるぜ!安心しなあ!嬢ちゃん!」
守備隊長「くっ・・連邦の存在意義は地球圏の平和維持ではないのか!
       我々は連邦に敵対しているわけではない!DCからの救助を願うのに なぜ条件などつけられねばならんのだ!」

ティターンズの要求、それは救援に向かう代わりにF91及びビギナ・ギナのティターンズへの譲渡、
及びシーブック=アノー、セシリー=フェアチャイルド両名のティターンズへの編入だった。

セシリー「私達にティターンズに入れと!?」
ジャマイカン「貴様達も知っていよう。今地球圏は異星人どもの襲撃を受け危機的状況にある。
        今は戦力の増強が急務なのだ。貴様らには前大戦での華々しい戦果がある。その戦果を買ってやろうというのだ」
守備隊長「・・・・。少し・・・考える時間をくれ」

通信を一度切ろうとした瞬間である。

索敵班員「た、隊長!先ほどまで後方待機していたと見られる敵DC部隊がここから距離5000に近づいています!?」
守備隊長「な、何だと!何故気付かなかった!」
索敵班員2「て、敵は後方にてバルーンを展開していた模様!バルーンの反応を我々は敵の部隊だと思わされていた模様です!」

とっさにその場にいた全員が一つの言葉を思い浮かべる・・・

-カロッゾ「確かに今貴様らがレーダーで捕らえられる範囲には我が軍はいないな。今は後方待機、と言ったところだ」-

守備隊長「しまった・・・!あの言葉がトリックだったか! あのセリフでまんまと敵バルーンを本物の部隊だと思いこまされたわけだ」
索敵班員「し、しかし、それでは敵本体はどのようにしてこんな近距離まで・・・」
守備隊長「お前はバルーンの示す反応には注意を払っていただろうが他の宙域も同等の注意を払って監視していたか?」
索敵班員「!」
守備隊長「注意さえそれさせれば、ミノフスキー粒子を散布したり、岩石に偽装したりと近づく方法はいくらでもある・・・」
セシリー「・・・私が出ます!敵をコロニー内に入れるわけにはいきません!」

一瞬の沈黙の後、守備隊長が口を開く。

守備隊長「すまん・・・セシリー。すまん、シーブック・・・」

困惑の表情を浮かべるセシリー

セシリー「隊長・・・?」
守備隊長「ジャマイカン閣下・・・。援軍を・・・お願いしたい」


同じ頃フロンティア4内部

???「ねえ、どうするのよ。外ではシーブックが戦闘してるみたいよ」
???「しかし・・・今我々が表立った行動をするわけには・・・」
???「ふう・・・。アナタのそう言う頑固なところ、相変わらずねえ」
???「もう少し静観していても、シーブックならきっと大丈夫だ・・・」
???「もう!」

金髪の美女がふくれつらをしてみせるが男はじっと動かない。

???「・・・頑張って・・シーブック・・・」


-そして舞台は宇宙-

シーブック「このおッ!」

ビームサーベルが唸りを上げてラフレシアに斬りかかる。
しかしさほどのダメージは与えられない。

シーブック「く、くそッ」

ラフレシアは巧みにF91をコロニーから引き離していた。
普段のシーブックならそう容易くカロッゾの誘導になどはかからなかったであろう。
しかし今のシーブックは冷静さを欠いていた。
カロッゾはわざと挑発するような通信をフロンティア4に送り、シーブックを怒らせていた。

カロッゾが不敵な笑みを浮かべる

カロッゾ「くくくく・・・。ここまで来ればそろそろいいだろう・・・。手筈通りF91はコロニーから引き離した。作戦を開始しろ」
ガイア「了解!マッシュ・オルテガ!続け!以下各機後れをとるな!」
マッシュ・オルテガ「おうっ!」

カロッゾ「・・・異界の力、か。どれほどのものか見せて貰おうではないか・・」

黒い三連星が空を切り裂きコロニーに近づく。
数機のハンブラビがそれに続く。

???「! 何!?邪悪なプラーナが近づいてくる!」
???「くっ、やはりバレていたのか。ランシャオ!仕方ない、グランヴェールで出る!」       
???「結局こうなるのよねえ・・・。フレキ・ゲリ、私達もやるわよ!」

それは異世界ラ・ギアスの魔装機神繰者、テュッティ・ノールバックとホワン・ヤンロンだった。

彼らはシュウの行動を探るべく、こちらの世界に来ていたのだ。

ラ・ギアスからの地球圏へ到達した際、DC部隊に発見され、これと抗戦、撃破した後
近くにあったコロニー・・・つまりフロンティア4に身を隠していた。

テュッティ「ねえ、一応、ここのコロニー守備隊長の人に言った方が良いんじゃない?
       私達、ここには忍び込んでるわけだし・・・」
ヤンロン「うむ・・。しかし、部外者をこう易々と進入させるここの守備隊もどうかしてるがな」
テュッティ「でも、そのお陰でしばらくここで休めたんじゃない。感謝しなくちゃ」

ヤンロンはヤレヤレ、といったポーズをとってテュッティに応える。

ヤンロン「物は言い様だな。だがしかし、ここへの連絡は事後としよう。今余計な手間をかけている暇はない。
      ここにはシーブックやセシリーがいるんだろう?後でで平気さ」
テュッティ「それにしてもDC、だったかしら?良くここが分かったわね」
ヤンロン「俺達の抗戦記録からこの位置を割り出したんだろう。あそこからじゃ身を隠せるような場所は他にない」
テュッティ「なるほどね・・。まあ何にせよ、ここの人達に迷惑かけるわけには行かないわね。そろそろいきましょう!」
                ・
                ・
                ・

索敵班員「! こ、今度はコロニー内部にモビルスーツ反応!」
守備隊長「な、何だとっ!!モニターまわせ!」

そこに映し出されたのは真紅に染められた火の魔装機神・グランヴェールと
美しい流線型のフォルムを持つ水の魔装機神・ガッデスだった。

守備隊長「なんだ!?あの機体はッ!」
セシリー「あれは・・・まさか、ヤンロンさんとテュッティさん!?」

通信が入る

テュッティ「セシリー、久しぶりね」
セシリー「やっぱりテュッティさん・・・・」
ヤンロン「何をしている!テュッティ!連絡は後にするといったはずだ!早くでないとDCをコロニー内にいれてしまう!」
テュッティ「細かいことは後で話すわ。とにかく、私達にまかせて!」

セシリーの顔に満面の笑みがこぼれる。

セシリー「隊長!ティターンズを待つ必要はなくなりました!あの人達は味方です。私も出ていっしょに戦います!」

守備隊長「何?そうなのか!? 今は藁にでもすがりたいときだ。それはありがたい!
       三機の機体があれば、何とかなるかもしれんな・・・ セシリー、出撃を許可する。ただし、くれぐれも無理はするなよ」
セシリー「了解!」


出撃するビギナ・ギナ。
彼女もまた、再び激戦に身を投じようとしていた・・・。

                 

        第四話「ロンド・ベル」


ガイア「ふん。異界だかなんだかしらんが、黒い3連星の力、思い知らせてやるわ!」

ガイアの部隊は総勢6機。
ガイア・マッシュ・オルテガの3人が乗るドライセンにビグロ2機、そしてアッシマー。

コロニーに近づく彼らの前に一つの機体が立ちはだかる。

テュッティ「やらせないッ!!フレキ、ゲリ、お願いっ!」

ガッデスのハイ・ファミリアがビグロを襲う。
テュッティの意のままに宇宙を駆けるハイ・ファミリア。並のパイロットにこれを避けろと言うのは酷な話だ。

エリート兵「う、うわあああああッ!!」

ビグロはこれを避けきれず大破する。

マッシュ「ふん、異界のやつらってのはこいつらのことだったか」
オルテガ「いくぞっ!!」

いきなり必殺のジェットストリームアタックをかける3人。
これまでにこの技によって葬られた者の数は知れない。
しかし、魔装機神操者に単発で通用する技ではなかった。

テュッティ「あたるものですかッ!!」

華麗に避けるガッデス。

エリート兵「!? う、うわああっ!ガイア隊長ッ!!」
ヤンロン「ふん。全然基礎がなってないな。出直せ!!」

ガイアが悲鳴のする方を振り向くと、もう一機のビグロが火を噴いていた。
グランヴェールのカロリックスマッシュがビグロを貫いたのだ。

エリート兵「くっ、そう簡単にやられるかっ」

アッシマーと対峙するビギナ・ギナ。

アッシマーはMS形態をとりビームサーベルで斬りかかる。
これを避けるビギナ・ギナ。

セシリー「私だって・・・戦えるんだからっ!!」

ビギナ・ギナのビームライフルがアッシマーに命中する。
しかし、アッシマーの固い装甲をライフル一撃で貫くことは出来ない。

エリート兵「甘いんだよッ!!」

後ろからMA形態のアッシマーの大型ビームライフルがビギナ・ギナに狙いを定める。

セシリー「!?  後ろにも!?きゃああああっ!」
               ・
               ・
               ・
シーブック「セシリー!? なんだ? 今のは!?」
カロッゾ「ふはははは!今頃は貴様らの援軍もろとも蹴散らされてる頃だろうよ」
シーブック「なんだと!? どういうことだ!カロッゾ!!」
カロッゾ「気付かなかったのか?私は囮だよ。貴様をコロニーからおびき出すためのな。
      私が貴様をおびき出し、コロニーから引き離したところでガイア達が フロンティア4を落とす手筈だ。
     クククク・・・はーっはっはっはっは!!」

さも可笑しそうに笑うカロッゾ。シーブックの顔は青ざめている。
自分の未熟さに後悔し、自責の念にかられ、どうしようもなく苛立つ。
しかし、今の自分に何が出来るのか、その答えが見いだせない。

シーブック「く・・くそっ!!」
カロッゾ「行かせんよッ!!」

ラフレシアが巨大な壁のように立ち塞がる。

シーブック「そこをどけえッ!!!」

滅茶苦茶にビームライフルを乱射するF-91。
しかし、そんな物が当たるわけがない。
程なくしてライフルのエネルギーゲージが点滅する。それが示すのは・・・・ライフルの弾切れ。

シーブック「くそっ、くそっ、くそおっ!!」
カロッゾ「(ふん・・。シーブックめ。完全に我を忘れているな。 これなら簡単に落とせるという物。ひよっこが)」
カロッゾ「とどめだッ!くらえいっ!!」

メガ粒子砲を発射しようとしたその瞬間だった。
衝撃がラフレシアを襲う。

??「ケッ。これしきのヤツに手こずるようなヤツ、仲間にしたところで役になんぞたたねえぜ!ジャマイカン!!」

それはヤザンのハンブラビだった。
ヤザンがシーブックを助けようとして攻撃を仕掛けたのかどうかは微妙だが
結果的にはヤザンの好戦的な性格がシーブックを救うことになった。

ヤザン「オラオラオラ!!」

次々と繰り出されるライフルの雨。
しかし最初の一撃こそ不意打ちでくらったものの、
カロッゾとて凡庸なパイロットではない。
数発は喰らったもののそれが致命傷になるようなことはなかった。

カロッゾ「貴様・・・。ぐあああっ!!」

体勢を立て直したラフレシアにまたも攻撃が降り注ぐ

ダンケル「ヤザン隊長!援護します!!」
ラムサス「これでも喰らいなッ!!」

ハンブラビの武器、通称「海ヘビ」がラフレシアを捕らえる。

カロッゾ「おのれええっ!!貴様ら!!」

カロッゾが怒りに震える。
しかし、ラフレシアはすでにF-91及びコロニー守備隊との戦闘で
テンタクルロッドは破壊され、バグも残り少なかった。
おまけにシーブックはこの混乱に乗じてコロニーへ向かっている。
ヤザン隊の相手をした後では追いつくのは困難であろう。

カロッゾ「くそっ!」

背を向けて撤退のそぶりを見せるラフレシア

ヤザン「逃がすものかよぉっ!!」

MS形態へと変形し、ビームサーベルで斬りかかるヤザン。
しかし、この行動はカロッゾの予測の範囲内であった。

カロッゾ「この若造があッ!!!」

反転するラフレシア。
そして至近距離からのメガ粒子砲がハンブラビを襲う。

ヤザン「な、なんだとぉッ!!」

ハンブラビはまともにこれを喰らう。この至近距離からのメガ粒子砲である。
ハンブラビの装甲とて役には立たない。
ヤザンは間一髪で脱出したものの機体は大破した。

ダンケル・ラムサスがヤザンを回収している間にラフレシアは悠々と撤退していった。

ヤザン「くっそおお!おい、ダンケル!貴様のハンブラビを俺に貸せ!奴を追う!」
ダンケル「無茶言わないでくださいよ。隊長」

ヤザンとダンケルが押し問答をしているとそこにジャマイカンからの通信が入った。

ジャマイカン「ヤザン機がやられたようだな。ヤザンを回収したのはダンケルか。ダンケルはヤザンをつれて帰還しろ。
        ラムサスは引き続きコロニー周辺のDCを蹴散らしてこい」

ダンケル「了解。ダンケル機、帰還します。命令ですから。ヤザン隊長、戻りますよ?」
ヤザン「チッ、ジャマイカンの野郎・・・。気にいらねえ・・・」

                    ・

                    ・

                    ・ 

シーブック「無事でいてくれよ・・・セシリー!!」

その頃、コロニー周域では機体を破損したビギナ・ギナをかばいつつ
グランヴェール・ガッデスが黒い3連星との戦いを繰り広げていた。
ビギナ・ギナは背後からの一撃で破損しつつも二機のアッシマーを撃沈。
しかしその際、脚部を破壊され思うように動きがとれなくなっていた。

マッシュ「手負いのMSを守りながら俺達にかなうと思っているのか?」
オルテガ「黒い3連星をなめるなよおッ!」
ガイア「ラングランを守護する魔装機神とはいっても二機で俺達にかなうものかよ!」

セシリー「すいません・・・。私、足手まといですね・・・。私の事は大丈夫です。二人とも戦いに集中して下さい!」
ヤンロン「そうはいかんよ。ここにこいつらを呼び込んだのはおそらくは私達だ。責任はとらないとな。」
テュッティ「大丈夫よ。セシリー。このくらい、どうとでもなるわ。」

とはいったものの、3連星は宇宙空間を自在に動き、前後、左右、そして上下から
攻撃を繰り出してくる。避けるのが精一杯で攻撃に転じることが出来ないでいた。

ヤンロン「くっ、このままでは・・・。ランシャオ!頼む!」
ロデム「お任せ下さい。ご主人様」
テュッティ「フレキ・ゲリ、お願い!」

ヤンロンが起死回生を狙ってハイ・ファミリアを放ちガッデスもファミリアを繰り出し反撃に転じる。

しかし、攻撃に転じる一瞬の静をガイアは見逃さなかった。

ガイア「もらったああッ!!」

ドライセンのビームキャノンがガッデスを直撃する。

テュッティ「きゃあああっ!」

ガイア「今だ!攻撃をたたき込めッ!!」
マッシュ「おうっ!!」

ヤンロン「くっ、テュッティ!!」

グランヴェールがガッデスを庇い、マッシュの攻撃をもろに受ける。

ヤンロン「くそっ、まずいな・・・」

負け・・・いや、死を覚悟したその時であった

??「なんでえ、誰かと思えば、ヤンロンにテュッティじゃねえか」

聞き覚えのある声がヤンロンに届く。空耳?いや、違う。
確かに通信回線を通じて送られてくる音声だ。

ヤンロン「・・・貴様、マサキか!?」

??「俺に任しときな!くらえっ!カロリックミサイル!」

ミサイルは外れたものの、ガイア達のペースを乱すのにマサキの増援は十分だった。

ガイア「サイバードだと!?なぜこんな所に!?」
マッシュ「ガ、ガイア!Zだ!Zガンダムまで増援にきやがった!!」
ガイア「なんだと!?」

驚いたのは敵ばかりではない。

カミーユ「セシリー、無事か!?」
セシリー「カミーユ!?それにマサキ!どうして!?」
カミーユ「フロンティア4の救難信号を受けて、脚の早い機体で先行して応援に来たんだ。まもなくロンド・ベル本隊が到着するはずさ」 
マサキ「俺が来たからにはもう安心だぜ!ヤンロン先生よお」

マサキがニヤニヤしながらヤンロンをからかう。
普段、絞られているその仕返しのつもりなのだろう。
あとでまたこってりと絞られることになるのだが、
マサキにそんな先のことを考えろというのは無理というものである。

ヤンロン「くっ・・・今は好きなことを言わせておいてやるが・・・覚えてろよ」

ヤンロンはこめかみをぴくぴく言わせながらマサキの言葉を聞いている。
今日は、彼の人生の中で一、二を争う厄日かも知れない。

マッシュ「おい、ガイア・・・。どうする?」
ガイア「ちっ、仕方ない。ここは退却する」
オルテガ「くそっ、ロンド・ベルめ・・・」

マサキ「おっ、あいつら逃げて行くぞ? どうする?追うか?カミーユ?」
カミーユ「いや、深追いはしない方がいいでしょう。下手なことをするとブライトさんに怒られますよ」
マサキ「じゃあ、俺だけでも・・・・」
カミーユ「1人で行って帰ってこられるんですか?」
クロ「カミーユの言うとおりだニャ。ここはおとなしくしてるのが良いと思うニャ」
シロ「そうそう。今度合流できた頃は戦いが終わってるかも知れないニャ」
マサキ「ぐっ・・・ちっ。しゃあねえ。諦めるか」

程なくしてF-91が現れた

シーブック「マサキさんにカミーユさん!助けに来てくれたんですか!!それにテュッティさんにヤンロンさんも!!」
マサキ「ま、結果的に役に立たなかったんじゃねえのか?ヤンロン達は?」

マサキがイタズラっぽくつぶやく。

ヤンロン「・・・聞こえたぞ。マサキ」
マサキ「げっ!おまえ、どういう耳してんだよ!!」
ヤンロン「・・・通信回線が開きっぱなしだ」
マサキ 「・・・・・・」
クロ「バカニャ」
シロ「調子に乗ってるからこう言うことになるんだニャア」

日常の漫才が繰り広げられ、ついさっきまでの緊迫した空気はすでにない。
しかし、そんな平和な空間も一つの通信によって砕かれた。

??「ほう。誰かと思えばロンド・ベルの諸君ではないか」
マサキ「誰だ?てめえ!?」
カミーユ「ジャマイカン!?お前こそなんでこんな所にいるんだ!」

嫌悪感を露わにするカミーユ。
カミーユはロンド・ベルに編入してくる前はティターンズに所属していたので
この男がどういう男かも知っている。

ジャマイカン「どうもこうもない。地球連邦として、DCに襲われていたコロニーを助けに来たのだよ。
        我々が来なければそこのF-91もどうなっていたことか・・・」

ジャマイカンが続ける

ジャマイカン「ふむ。F-91とビギナ・ギナ、ロンドベルの他にも機体があるようだが・・
        まあ良い。フロンティア4の機体は今から我がティターンズ艦隊のものとなるのだからな」
セシリー「グランヴェールとガッデスの二機はフロンティア4の機体ではありません。
      よって貴方達に帰属する理由もないと思われます」
ジャマイカン「ほう。ならそいつらの所属を証明する物はあるのか?」
セシリー「そ、それは・・・」

ジャマイカンがイヤな笑みを浮かべる。
そして言い放ったセリフは・・・・

ジャマイカン「二つに一つだ。その機体をティターンズに帰属させるか、
        さもなければ、正体不明機、異星人の機体の可能性もあるとしてこれを破壊する」


         

           第五話「揺れ動くこころ」

セシリー「そんな・・・。彼らは侵略者などではありません!」
ジャマイカン「それならば問題なかろう。我々は地球の防衛のために戦力の増強を行うだけだ。
        その2機にも協力して貰うだけなのだからな。ふむ、そうだ。カミーユ、キサマもティターンズに戻るか?」

あまりにも横柄なジャマイカンの態度にマサキが口を挟もうとしたその時、ロンドベル本隊が到着した。
ジャマイカンは軽く舌打ちをした後、旗艦、アーガマに通信を開く。

ジャマイカン「ご苦労なことだな。ブライト艦長。だが、DCどもは我々が蹴散らした。無駄足だったな」
ブライト「そうですか・・。ご苦労様でした」
ジャマイカン「思うに艦長、ロンド・ベルは大きくなりすぎたのではないか?思うように身動きがとれんようでは
        独立外部部隊としての機能を充分に発揮できないのではないのかな?」

高圧的な態度でブライトを見下すジャマイカン。それに対しブライトはあくまで礼を欠かさない。
対照的な二人の司令官の問答が続く

ブライト「・・・つまり、ガッデス。グランヴェールの二機の魔装機神、F91、ビギナ・ギナ、
     そしてこちらのオーラシップとオーラバトラーをティターンズ管轄に移せ、と?」
ジャマイカン「そういうことになる。オーラバトラーとやらはドレイクとかいう異界の侵略者と同じ世界から
        来たのであろう?スパイの疑いもあるからな。我々が監視しようと言っておるのだ」

ブライトはあくまで毅然と言い放つ

ブライト「お言葉ですが、彼ら聖戦士の助けがなければ、地球圏でのゲストの戦いの行方も違った結果に
     なっていたかも知れません。それにオペレーション・レコンキスタではトレーズ准将を護る為、
     ドレイクの軍勢とも闘っております。
     万が一彼らがスパイであれば、あの機に准将を亡き者にすることも可能であったはずです」
ジャマイカン「・・・ふん、どうだかな。まあいい。行くぞ」

ジャマイカンが繰舵手に声をかけ、続けてシーブック、セシリー、ヤンロン、テュッティに通信を送る

ジャマイカン「おい、何をしている。デッキを開けてやる。早く入ってこい。貴様らの所属はたった今からティターンズになるのだからな」

アムロ「いいのか?ブライト?」
ブライト「・・・どうにもできんよ。我々は軍属なのだ。ジャマイカンも間違ったことを言っているわけじゃない。どうすることもできん」
忍「おいおい、艦長!前大戦で一緒に闘った仲間なんだろう?いいのかよ?」
甲児「くそっ、あの野郎・・・この調子じゃ、軍属じゃない俺達まで、そのうちティターンズに配属する、とか言い出しかねないぜ!」

デッキでは皆、口々に不安を口にする。あくまでロンド・ベルは地球連邦の所属である。
軍属である限り、軍上層部からの命令は絶対であった。

ブライト「すまないが、私には何もできん。トーレス、当初の予定通り、アクシズへ向かう。ラビアンローズで
      補給を受ける手筈が整っている。ラビアンローズに向かってくれ。私は部屋で休む」
ドモン「お、おい!艦長!あいつら、本当にティターンズの所属になってしまうぞ!いいのか!?」

ドモンの言葉が聞こえないかのように、振り向きもせずデッキをあとにするブライト。
その背中には歴戦の勇者達を率いている覇気が微塵も感じられない。

アムロ「ブライト・・・・」

自室に戻ったブライトは血が滲むほどに唇をかみしめ、拳は爪で傷つくほどに強く握りしめる。
軍属としての自分と、自らの信じる正義を全うしたい自分。
ティターンズの不穏な動きに不信感を募らせつつも何もできない自分への苛立ち。

いっそのこと、軍を離叛してしまおうか、何度そう考えたことか。
そうすることが出来ればどれほど楽であろうか。

しうし、そうすることに対する代償は大きい。
軍からの補給なしで侵略者達と、そして最悪、地球連邦と闘うことが出来るのか。
軍を離叛したロンド・ベルに所属している民間の機体を有する研究所、早乙女研究所や光子力研究所、
南原コネクションの処遇はいったいどうなるのか。

自分の判断一つで多くの犠牲を払いかねない。その重圧の中、ブライトの心は揺れていた。

ブライト「くそっ・・・私はどうすれないいんだ!!」

自室の壁に何度も拳をぶつけるブライト。
拳は蒼く腫れ上がり、痛々しい。
そして最後に渾身の力を込めて壁を殴ろうとしたとき、アーガマが大きく揺れた。

ブライト「!? な、なんだ!?」

部屋のモニターにトーレスからの通信が入る。

トーレス「ブライト艦長!ガンダムタイプです!例のガンダムタイプのモビルスーツが2機、ティターンズに攻撃を仕掛けています!!」
ブライト「なんだと?我々には攻撃をしてきていないのか?さっきの衝撃は?」
トーレス「ティターンズのムサイが一隻、ガンダムに落とされました。その衝撃波を喰らっただけです。
      我々には目もくれず、ティターンズのみを攻撃しています!」
ブライト「どういうことだ・・・?」

状況が理解できない。しかし、指揮官としてここでうろたえるわけにもいかない。
ブライトは頭を切り換え、一艦隊の指揮官としての表情に戻る。

ブライト「よし、総員、第二種戦闘態勢!ガンダムがこちらに攻撃を仕掛けてくるようなら迎撃に移る!」
トーレス「了解!総員、第二種戦闘態勢!パイロットは機体の乗り込み、いつでも出撃できるような体制を整えろっ!」
ブライトが急いでデッキに戻ったその時、謎のガンダムから通信が入る。

???「よお、久しぶりだな、ロンド・ベル!」

やけに陽気な少年がモニターに映し出される。この少年があのガンダムのパイロットなのだろうか。

???「俺の名前は、デュオ。死神、デュオ・マックスウェルだ。借りを返しにきたぜ!」
ブライト「借りだと?どういうことだ?」
???「この前、コロニーを盾に取られ、身動きできなくなった僕たちを黙って見逃してくれたじゃないですか」

モニターは別の少年を映し出す。華奢な、それでいて強い意志の炎を宿した瞳を持つ色白の少年。
少年はカトル・ラバーバ・ウィナーと名乗った。機体はガンダムサンドロック。
デュオとカトル、この二人の心もまた、揺れていた。
ロンド・ベルは本当に敵なのか、真に自分たちが闘う相手は誰なのか。
それを見極めるためにも、彼らにとってこの戦闘は重要な物であった。

デュオ「さっきからのあんたらの通信、傍受させてもらったぜ。
     連れてかれそうな4機、あんたらの仲間なんだろ?俺達がティターンズを襲撃すればあいつらは
     あんたらに救援を求めるだろ?そうしたらこう言ってやればいいのさ。
     [条件として、さっきの4機をロンド・ベルに組み入れる]ってな!」

カトル「僕たちは、まだ貴方達を敵ではないと判断したわけではありません。
    でも・・ティターンズに戦力が増強されるのは危険です。僕たちはそれを阻止するためにも闘います」
ブライト「悪いが、デュオと言ったか?それは出来ない。我々は救援要請を受ければ、
     その時点での「全力で」君たちと闘うことになる。トーレス、各パイロットにもそう伝えろ」
トーレス「し、しかし・・・」
ブライト「これは命令だ!伝達するんだ!」
トーレス「りょ、了解!」

ブライトの命令を聞いたパイロット達は怒り心頭、と言った面持ちでデッキにかけつける

甲児「いい加減にしてくれ!ブライトさんよ!一体どうしちまったんだ!?」
竜馬「甲児君の言うとおりです、ブライトさん!いつからそんなになってしまったんですか!?」
豹馬「もう我慢できねえ!俺達はロンド・ベルを離れるぜ!コンバトラー・チームはもうあんたの命令では動かないぜ!」
ドモン「レイン、この艦を下りるぞ。どうやら俺の見込み違いだったようだ。
     こんな不抜けた艦にいたらいつまで立ってもデビルガンダムを倒すことなどできん」

そんな面々にブライトは冷たく言い放つ

ブライト「好きにするが良い。君たちは元々軍属ではないんだ。我々に付き合う必要はない」
ルー「あーあ、ほんっと、拍子抜けね。行こ、ジュドー。私達はいらないってさ」

軍属ではない、「善意の協力者」たちは続々とロンドベル脱退の意志を表示する。
軍属でもダンクーガチームは部屋にこもり、命令拒否の姿勢だ。
しかしそんな中、アムロ、カミーユ、クワトロの三人はモビルスーツデッキにいた。

アムロ「機体の調整が甘いじゃないか、こんな機体では戦えない!何をしていたんだ、整備班!」
カミーユ「Zガンダムの調整はまだなのか?確かに出撃したばかりだが直接的戦闘はしていないんだ、時間がかかりすぎだぞ」
クワトロ「悪いな。脚部のバーニアの出力が弱すぎる。これでは満足な戦闘などできんよ。
            必要であればパーツを交換してでも出力を上げてくれ」

整備班は、普段文句を言うことの少ない三人が揃って注文を付けてくることに対する戸惑いから余計に整備に手間取っている

「いつも通りにチューニングしているはずなのに、なにがいけないんだ・・?」
「さあ? しっかし、他の連中は出撃拒否だとか言ってるのに、あの人達は従順なんだな・・・」

カミーユ「これでいいんですよね?クワトロ大尉」
クワトロ「ブライト・・・一体どうするつもりだ」
アムロ「ティターンズからの救援要請がいつ来るか、だな。俺達の時間稼ぎはそうは延ばせない・・」

そんなとき・・・

トーレス「! き、来ました!ティターンズからの救援要請です!」
ブライト「・・・来たか。トーレス、回線をジャマイカンに繋げ」
トーレス「は?出撃命令は出さないのですか?」
ブライト「ふっ、この状態で出撃命令など出せると思うか?」
トーレス「そ、それは・・・。わかりました。回線、開きます・・・」

デュオ「お、遂に救援要請出しやがったな。ティターンズめ。さーて、どう出る? ロンド・ベル?」
カトル「信じたい・・・ロンド・ベルは敵じゃないって・・・」

        

         第六話「己が信じる正義のために」


ジャマイカン「ええい、何をしている!あんなガンダムモドキの一体や二体、さっさと落とさんか!我々はティターンズなんだぞ!!」

苛立ちを隠そうともせず、ジャマイカンが怒鳴り散らす。

ジャマイカン「ヤザン!ダンケル!ラムサス!!何をしている!さっさと出撃せんかっ!!」
ヤザン「無茶言うな、ジャマイカン。俺達の機体は整備中だ。出たくても機体がなけりゃぁな。・・・・うおぉっ!?」

凄まじい衝撃がブリーフィングルームを襲う。
サンドロックとデスサイズの攻撃の手がこの艦にまで及んだのだ。

デュオ「ほらほらほら!どうした!?漆黒の死神、デュオ様のお通りだぜ!もっと盛大に迎えてくれよ!?」

デュオとカトルによって、ティターンズ艦隊はほぼ壊滅状態であった。
残るは旗艦、アレキサンドリアとムサイ改が2機。

ジャマイカン「おのれぇ・・・反逆者どもめ!おい!F91を出せ!ビギナ・ギナと異世界のロボットもだ!」

セシリー「シーブック・・どうするの?私達の機体も調整なんて全然済んでいないわ」
シーブック「だが、ここにいても何も始まらないな。外に出れば何か活路が開けるかも知れない。
       混乱に乗じてロンドベルに戻れるかも・・・」
ヤンロン「考えが浅はかだな。あまり物事を自分の都合のいいように解釈するのは止したほうがいい」
シーブック「しかし・・・!」
ヤンロン「だが、行動を起こさなければ何も起こらないのもまた事実だ。行くか?テュッティ?」
テュッティ「そうね。とにかく外に出て、状況を見極めましょう」

シーブック「よし・・・決まりだな。ジャマイカン艦長、了解しました。出撃します!!」


ジャマイカン「ロンドベルはどうなっている!?あいつらは一体何をやっているんだ!通信開け!!」

ジャマイカン自ら、アーガマに通信を送る。その顔は怒気に満ち満ちていた
程なくしてモニターにはブライトが映し出される。

ジャマイカン「ブライト艦長!どういうことだ?我々の救援要請が届かなかったわけではあるまい!?」
ブライト「ふ・・お恥ずかしい話ですが、我々には、ティターンズを援護するだけの力はありませんよ」

さしものジャマイカンもこの言葉には面食らったようだ。一瞬、呆気にとられた表情を見せる。

ジャマイカン「・・・?何を言っている?私をバカにしているのか?」
ブライト「ゲッター、マジンガー、コンバトラーは私達のやり方に賛同できないとのことで、この艦を下ります。
     ジュドー達やドモン達も同様。ネルフの面々及びオーラバトラー、ダバ君達はオーラシップの方に搭乗しています。
           オーラシップはまだこの宙域に到着していません。
     我々はフロンティア4の救難信号を受けて先行して急行してきたものですから・・・
     マサキのサイバスター、カミーユのZ、アムロのリ・ガズィ、クワトロ大尉の百式は整備中です。出撃できません」
ジャマイカン「貴様・・・そんな言い訳が通じると思っているのか!?艦を下りるものがいるだと!?
        そんなもの、命令で強制的に出撃せさればいいのだ!」
ブライト「・・・お言葉ですが、彼らは軍属ではないのです。私の命令を聞く義務はありません」
ジャマイカン「クッ・・・」

そんな二人の会話を遮ったのはトーラスの叫びだった

トーラス「ブ、ブライト艦長!コンバトラーV、ゲッターロボ、シャイニングガンダム、マジンガーZ、ダンクーガが
      ブリッジを開けて出撃体制をとっています!!
     ・・・・あ!い、いえ、出撃しました!!戦闘空域に向かっています!」

ジャマイカン「ん?なんだ?貴様らのシャイニングガンダムから通信が入っているようだ。
        ブライト艦長。ロンドベルは奴らに見放されたのではないか?
        奴らは奴らの正義の元、ティターンズと共に戦おうというのだよ。おい、回線を開け!」

ジャマイカンが得意げに通信手に命じる。
だが、ジャマイカンの余裕が長く続くことはなかった。

ドモン「聞け!ティターンズ!俺達はもう、ロンドベルではない!真の独立部隊だ。
    俺達はティターンズ、DC、異星人、全てに対し戦いを挑む!!俺達は俺達の正義の旗の元戦う!!」

ジャマイカン「な・・・なんだと!?貴様、自分の言っている意味が分かっているのか!?」
ドモン「これが俺達の答えだ!受け取れ!」

そういうとドモンは一方的に通信を切った、そして・・・

ドモン「俺のこの手が光って唸る!!正義を語る悪党を倒せと輝き叫ぶぅ!!
     喰らえッ!ひっさぁつ!!!シャァァァァイニング フィンガァァァァァァァッ!!!!!!!」

次々にティターンズのMSを落とすドモン。そしてそれにゲッター、コンバトラー、ダンクーガ、マジンガーが続く

デュオ「お?おい、見ろ、カトル!ロンド・ベルにも骨があるやつぁいるもんだぜ!」

戦闘のペースは完全に反ティターンズの軍勢が握ったかに見えた。しかし・・・

シーブック「くっ、出てきたはいいものの・・・どうすればいいんだ!?」
テュッティ「・・・参ったわねぇ」

予想外の展開に戸惑うシーブック達。

忍「おい、シーブックとかいったか?どうするんだ?俺達の邪魔をするなら誰だろうと容赦はしねぇ!」
ヤンロン「くっ・・・・。どうする?どうすればいい・・・?」

膠着した戦線をじっと見つめるブライト。
そして・・・

ブライト「ふっ・・・あのバカどもが・・・。私の苦悩を無駄にするか・・・」
トーレス「艦長?」

トーレスが怪訝な表情を浮かべる

ブライト「あいつら・・・戦艦もなしにどうやって地球に帰るつもりなんだ?」
トーレス「そりゃ、フロンティア4まで行けばいくらでも・・・うぐぐっ!」

トーレスの口を遮ったのは、いつの間にかブリーフィングルームに戻っていたカミーユだった。

カミーユ「覚悟は決まりましたか?艦長」
アムロ「俺達はブライトの決断を信じるよ」
ブライト「アムロ、カミーユ・・・・そうだな・・・トーレス、艦内放送を開いてくれ。クルーに話がある」

神妙な顔つきで語るブライト

ブライト「聞いてくれ。我々、ロンド・ベルはたった今より、連邦軍の管轄を離れ、完全な独立部隊として
     行動することにする。言い方によっては連邦への離叛とも言える。
     この艦を下りるものを咎めることはしない。連邦の正義を信じて戦いたいものはティターンズに編入させよう。
     独立の狼煙を上げるのはそのあとだ。10分間、ブリッジを開けておく。下りたいものは下りてくれ」

放送が終わると艦内は轟音のような歓声に包まれた。
艦を下りようとする者などただの一人としていない。ブライトの決断は正しかった。
皆、ブライトのこの言葉を待っていたのだ。
艦内に残っていたジュドー達がブライトの元へ駆けつける。

ジュドー「やっと決心してくれたんだ!ブライトさん!俺達のさっきの言葉は撤回するぜ!
      ここを下りる理由なんてなくなった!これからも今まで通り、よろしく頼むぜ!」

だが、ブライトの表情は決して明るくはない

ブライト「いいのか?ジュドー。これからは補給もロクに受けられなくなる。厳しさはこれまでの比ではないぞ」
ジュドー「バッカだなぁ。ブライトさん!そんなの、誰も心配してないって!なんとかなるなる!」
ブライト「ジュドー・・・・。そうか・・・。よし、もう迷ってはいられないな。
     私を信じてついてきてくれる者達のためにも。トーレス!全宙域に通信を開いてくれ」
トーレス「了解ッ!!!」

ジャマイカン「何の用だ? もはや貴様達には何の期待もしておらん!そこでおとなしく元の仲間が
        やられるところを見ているが良い!シーブック!裏切り者どもを落とせ!!」
ブライト「その必要はなくなった・・・。シーブック、ドモン、みんな、聞いてくれ。
      ロンド・ベルはこれから真の意味での独立部隊となる。何者にも縛られない。我々の正義のみを信じて戦う。
      決断が遅くなったが・・・もう一度、私達に力を貸してくれないか?」
ジャマイカン「な、なんだと!?貴様、自分が何を言っているか分かっているのか!?」

だが、ブライトの意志はすでに固まっていた。
その瞳には揺るぎ無い自信が宿っている。
「自分の決断は間違っていない」と。

ジャマイカン「自分たちの正義だと?正義は連邦に・・・いや、ティターンズにある!我々が正義なのだ!
        シーブック、とっとと裏切り者どもを潰せ!異界の者ども!貴様らもとっとと戦かわんか!!」

ブライト「黙れ!お前達の何が正義か!地球圏の保身ばかりを考え、コロニーを抑圧し、無意味な戦いを起こす貴様らが!」
     
ブライトの話をじっと聞いていた面々が通信をアーガマに送る。
皆、同じ内容の通信を。
それはガンダムデスサイズ、ガンダムサンドロックからの通信も例外ではなかった。

「ブライト艦長の英断を支持する。共に平和のために戦おう」     


         第七話「闇に蠢くモノ」

 

???「…ねぇ、今の話、聞いた?」
???「ええ、聞いたわ。」

???「私達ってどうなるのかしらね?」
???「どうなるのかしらね。」

どこかの戦艦のブリッジであろうか。
若い女性二人が淡々と会話を交わしている。

落ちついた大人の雰囲気、というよりは冷めた感じの会話である。
・・・と、そこにけたたましい足音と共に一人の少女が駆け込んできた。

???「ちょ、ちょっと!!何よ今の通信!どう言う事ぉ!?」
???「どうもこうも、聞いた通りよ。アスカ。全くもって、言葉通り」


少女は「選ばれし子供」人造人間エヴァンゲリオンパイロット、
惣流・アスカ・ラングレー。
そしてブリッジで会話を交わしていた二人は連邦軍所属、葛城ミサトと
赤木リツコ博士。こう見えても特務機関NERVのメンバーである。

と同時に、「かつての」連邦軍第13独立部隊ロンド・ベルのクルーとして
ブライト達と行動をともにしていた。

そう、つい先ほどよりロンド・ベルは連邦を脱退。完全独立軍となっていた。

あくまで連邦所属の彼女らは宙に浮いた形になってしまったのだ。

シーラ「お困りのようですね」
ミサト「シーラ女王・・・」

ミサト達が搭乗している艦の艦長とも言えるシーラがミサトに声をかける。
沈痛の面持ちでシーラに向き直るミサト。

アスカ「で?一体どうするつもり? どうせグランガランはロンドベルにつくんでしょ?
    そしたら私達、いきなり敵のド真ん中じゃない!!」
シーラ「ご心配には及びません。ロンドベルの方々が、連邦所属だからと言って無条件に

    あなたがたに危害を加えるような事はありませんよ」
アスカ「そんな事、わかるもんですか!」

リツコ「アスカ、落ちつきなさい。今、碇司令に今後の私達の行動を問い合わせているわ」
アスカ「聞くまでも無い事じゃない!NERVはあくまで連邦所属なのよ!?
    帰還命令よ、それ以外ありえないわ!!

    ほら、バカシンジっ!あんたも何とか言いなさいよっ!」

アスカに怒りの矛先を向けられたシンジは苦笑いを浮かべて応える

シンジ「仕方ないよ・・。こうなっちゃった以上、なるようになるしかないさ。
    ここで僕たちが口論したところでどうにもならないじゃないか・・」

んなシンジの態度がアスカの怒りに火を注ぐ。

アスカ「あんったねぇ!!何のんきな事言ってんのよ! だいたいブライトもブライトよ。
    独立だなんだと言い出す前に、私達の意見も聞きなさいよっ!
    ・・・ひょっとして、私達の事忘れてたんじゃないの? ファースト、あなたどう思う?」

それまで黙って会話を聞いていたレイが、会話を促され口を開く

レイ「別に・・・。私にとってはどうでも良いことだわ。私は命令に従って動くだけだもの」
アスカ「・・・あんた達に意見を求めた私が馬鹿だったわ」


さしものアスカもシンジとレイのこの受け流しに怒りつづける気力はなかったようだ。
空気の抜けた風船のように一気に元気がなくなってしまった。

 ミサト「あらあら。さっすがシンジ君とレイねー。アスカをなだめちゃったわ」
アスカ「なだめられてんじゃなくて、呆れてものも言えないのよ」

 ―そんなやり取りがグランガランで行われている頃、
 地球の第二新東京市、特務機関NERV本部―

冬月「どうするつもりだ?碇?一応、我々は連邦所属という事になっているが・・」
碇「ゼーレの老人どもはなんと言っている?」
冬月「今となっては、もはや連邦の資金を仰ぐ必要も無い、独立軍としてロンドベルに
   このままエヴァを編入させておけ、との決断らしいだが?」
「なるほど。連邦よりロンドベルの方が御しやすいと考えたか」
冬月「その考えには私も賛成だがね。キミはどう考える?」
碇「確かに、小賢しい連中が多い連邦に比べ、ロンドベルは戦闘専門の集団だからな。

  奴らについていたほうが我々も自由に動けるだろう」

冬月「決まりだな。連中への連絡は私がしておこう」
碇「ああ。頼む」


冬月が去ると、ゲンドウは不適な笑みを浮かべる。

碇「ロンド・ベル…。せいぜい連邦の高官どもの目を引きつけておいてもらおうか…」


―そして舞台はロンド・ベル―


甲児「いやー、ブライトさん、なかなかカッコイイ事いうじゃねぇか!」

隼人「全くだ。しかし、もう少し早く決断してもらいところだったが…」
忍「ま、いいじゃねぇか。結局はブライト艦長も男だったって事だぜ。獣戦機隊はこれからもあんたについて行くぜ!!」

 アーガマのブリッジは沸きに沸いていた。
誰一人としてブライトの決断を責めるものはいない。
もっとも、独立に反対するものがいれば、艦を降りる機会もあったのだ。
だがしかし、一人として艦を降りようとするものはいなかった。

連邦から独立すれば、
戦いはよりいっそう激しさを増すであろう事は誰でも容易に想像できる。

それでも敢えて全員がアーガマに残った。全てのクルーの意思が確固として固まっている。

ロンド・ベルの強さはこんなところにもあるのかもしれない。
パイロットと機体だけで戦争が出きるわけはない。
それを支えるメカニック、そして艦船のクルー。
どこに不安分子があっても部隊は崩壊しかねないだろう。
たった1つのひび割れから、強固な堤防が決壊する事もあるように…。

その事をブライトは今、痛感していた。
なぜ自分一人で抱え込もうとしていたのか。

これだけの分かり合える仲間がいる。これほど頼もしい事はない。
仲間に対する感激が、新たなる戦いの決意に変わるまでそう時間はかからなかった。

と、そこへ地球からの通信が入る

トーレス「あ、艦長、地球から通信です!」
ブライト「なんだ?早速連邦か?」

トーレス「いえ…これは・・・ あっ、
NERVです。NERVからの通信です」
ブライト「あっ…」
アムロ「そうか…
NERVはあくまで連邦所属か…」

クワトロ「…」

ブライト「と、とにかく、通信に出よう。トーレス、つないでくれ」


トーレスが通信をつなぐ。
前方モニターに映し出されたのはNERV司令、碇ゲンドウではなく副指令の冬月だった

冬月「聞いたよ。ブライト君。ずいぶんと思いきった事をしたものだな…」
ブライト「申し訳ありません。しかし、私は自分の決断は間違っていたとは思いません。
     しかし、こうなった以上、EVAを我々の方においておく事はできないでしょう。
     ただちにNERVクルーとともにそちらにお返しいたいします」
冬月「勘違いしてもらっては困るな。

   我々は、EVANERVクルーをそちらに正式に編入願おうと思っておるのだがね」

この言葉にはさしものブライトも驚きを隠せなかった。

あの碇ゲンドウがそのような事を許すわけはないと思っていたのだ。
しかしアムロも同じ思いだったらしく、
ブライトが言葉を発する前に冬月に疑問を投げかけていた。

アムロ「それはありがたいのですが…。あの碇司令がよく許可を出しましたね」
冬月「ふっ。碇め、えらい言われようだな。まぁ、NERVとしても少々考えがあってね。
   このまま連邦につくよりロンド・べルとして活動した方がメリットもあるのだ。
   どうかね?我々を受け入れてくれまいか」

カミーユ「確かに
EVAの戦力は魅力的だけど…。
     何か裏がありそうな気がしませんか?アムロさん」

話しを聞いていたカミーユがアムロに耳打ちする。

アムロ「・・・。しかし、確かな証拠はない以上、断る理由にもならないだろう。
    それに、今は少しでも味方が欲しい」
カミーユ「味方…。そうだといいんですけどね…。何か嫌な感じがするんです」
アムロ「なに、大丈夫さ。少なくともシンジくん達が直接敵になる事はないだろう。
    碇司令に関しては確かに油断はならないかもしれないが…」
カミーユ「楽観的なんですね」
アムロ「少しは楽観的に考えないとな、厳しい戦いになる。
    気の持ちようも大事なファクターだよ、カミーユ。悲観的過ぎるのは良くない」

カミーユ「わかりましたよ。確かに僕もシンジ達が直接敵になる事はないと思いますし…」
 

アムロとカミーユの様子を見ていた冬月がやれやれ、と言った表情で口を開く

冬月「我々はそんなに信用がならんかね?ニュータイプの少年?」
カミーユ「え?い、いや、そう言うわけでは・・・」


ここでブライトが口を開く

ブライト「やめろ、カミーユ。冬月副指令、そのお申し出、ありがたくお受け致します。
     NERVのクルーとEVA3機、我々で預からせていただきます」
冬月「そうか。それは良かった。地球での補給は我々も協力しよう。
   頑張ってくれよ。ロンド・ベルの諸君・・・」

―数分後、グラン・ガラン―

マヤ「!! 来ました! NERVからの通信です! 回線、つなぎます!」
冬月「待たせたな。我々のとる道が決まったよ。ブライト君とも先ほど話をつけた」
アスカ「へぇ…。素直に私達を本部まで送ってくれるとでも言うのかしら?」

嫌味たっぷりにアスカが言う。
もちろん、今回の騒動に冬月が関係あるわけではないのだが、機嫌が悪い時には誰にでも
あたる(加持は別だろうが)
これぞアスカのアスカたる所以かもしれない。

冬月「…やれやれ。きみたちもNERVは連邦に残ると思っているのかね」
ミサト「違うんですか?私達はてっきり…」
リツコ「よく司令が認めましたね」

冬月「アムロ君と同じ事を言うのだな。赤城博士。だが、NERVは今後、連邦と訣別、ロンド・ベルに協力する。以上だ」
アスカ「ちょ、ちょっと待ってよ、どう言う事!?ちゃんと理由を説明してよ!
    連邦を離れるんだから、それ相応の理由があるはずよ!!」
冬月「理由…か。ブライト君の独立宣言に、私達も感動してね。彼の力になりたくなったのだよ。
   それだけだ。通信を終わる」

アスカ「な…。そんな答えで納得すると思うの!?こらーーーっ!!」
ミサト「やめなさい、アスカ。どんな考えがあるのか分からないけど、
    命令が出たからには私達はそれに従うだけよ。
    シーラさん、お聞きの通りです。私達もこれで晴れてロンド・ベルとなります。
    今後とも、宜しくお願いします」
シーラ「いえ、こちらこそ。共に平和の為に戦いましょう。

    悪しきオーラ力から地球を守る為に」

そんなやりとりにリツコは背を向けて誰にともなく呟く

リツコ「平和の為に…ね。碇司令、一体何を考えているの…?」



               To Be Continued Next Episode... 

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